ハワイアンが教えてくれた「アロハ」を被写体に込めて―自然写真家・高砂淳二が語るハワイへの思い

「最高だった! もう一度行きたい」。ハワイを訪れた人々はみな、口をそろえてそう言います。ハワイといえば、眩しい太陽にどこまでも続くエメラルドグリーンの海、ダイナミックな自然美や南国特有の温かい雰囲気が思い起こされますよね。きっと常夏の島ハワイには、何度訪れても色褪せない魅力が詰まっているのでしょう。

海中や生き物、風景まで地球全体をフィールドに活躍する自然写真家の高砂淳二さんも、そんなハワイの虜になったひとり。ハワイで出会った奇跡的な瞬間や深い共感を覚えたハワイアンの思想に加え、自然写真に込める思いなど、心に響くエピソードを余すことなく語っていただきました。

 

水中カメラマンになれば一生遊んで生きていける!それが写真家への第一歩

―高砂さんが本格的に撮影した最初の写真は「水中写真」だったそうですが、カメラマンになろうと思ったキッカケを教えてください。

高砂さん:私がカメラと出会ったのは、大学を休学してワーキングホリデーで訪れたオーストラリアのパースでした。宮城県石巻市出身の私にとって海はめずらしい存在ではなかったものの、初めて目にした透明度の高いトロピカルなケアンズの海に心が躍り、その後ちょっと住んでみたパースで初めてダイビングをしてみたんです。

そうしたら海中には、赤や黄色、緑色の魚が泳ぎ回り、見たことのないカラフルな光景が広がっていて、まるで別世界。『水中にこんなに鮮やかな色があったんだ』と感動しました。それに、自分の体と水中との境界線がなくなるような浮遊感も気持ちよくて、ダイビングにハマっていったんです。

しばらく滞在して潜っていたら、仲間の1人が『水中写真が売れた』と喜んでいて。そのとき初めて『水中カメラマン』という職業があることを知り、『水中カメラマンになれば一生遊んで生きていける』と思いました(笑)。それが写真家への第一歩でしたね。
高砂淳二
―数えきれないほどの自然を撮影してきた高砂さんが感じる、ハワイの海や海中生物の魅力は何でしょうか?

高砂さん:ハワイには昔から先住ハワイアンたちが暮らしていますが、彼らは生き物や大地をとても大事に扱ってきました。とくにウミガメは守り神と崇めていたほど。そういう文化に加えて、アメリカの徹底した絶滅危惧種保護活動などもあり、生き物たちが人懐っこいんだと思います。人間の姿を見つけても怖がるどころか、むしろ近寄って来るほど警戒心がないので、ナチュラルな表情の写真が撮影できるという魅力がありますね。

海でいうと、ハワイ島のカイルア・コナの沖が個人的にお気に入り。コナの海のブルーは、言葉では表現できませんが、どの海とも違うブルーの色をしているんです。透明度もハンパなくて、50~60mぐらい下まで肉眼で見えるんじゃないかなぁ。ビーチは、有名なワイキキやラニカイなどの白くて美しいビーチなどのほかに、溶岩でできた神秘的な黒砂のビーチも多く存在するんですよ。

 

最高の祝福を意味する「ナイトレインボー」との奇跡の出会い

―ハワイでまさに「奇跡の瞬間」を写真に収めたエピソードをお聞きしたいです。

高砂さん:「ナイトレインボー」と呼ばれる夜の虹を捉えた瞬間が忘れられません。初めてハワイに1カ月半ほど長期滞在した2000年のことです。そのとき出会った先住民の方にハワイアンの文化などを教えてもらうなかで、最高の祝福を意味するナイトレインボーの話を聞きました。

満月の夜、車を走らせていたら、たまたま遭遇してしまったんです。ちょうど話を聞いた3日後のことでした。現地に住んでいても出会える人は一握りなのに、これには驚きました。「これがあのナイトレインボーか!」と感動しながら夢中でシャッターを切ったことを覚えています。
高砂淳二
その後も、ナイトレインボーを狙って何度もハワイに足を運びました。トータルで17~18回は出会ったかな。毎回なにかしらのエピソードがあって、あるときは夜な夜な島を回ってもどうしても見られずふて寝をしていたら、フッと目が覚めて「行かなきゃ」という衝動に駆られ、再び走り出した途端に出会えたり。またあるときは、ラスト1日という滞在最終日の朝に、ハワイ島のワイピオ渓谷にナイトレインボーが出る夢を見て、ダメ元でそこに行ってみたら出会えたり。そういった不思議な偶然が重なって、「night rainbow 祝福の虹」という写真集が1冊できあがりました。

―一度ハワイに行くと「必ずリピートしたくなる」といわれますが、高砂さんがここだけは訪れてほしいと思うハワイのスポットはどこでしょう?

高砂さん:まずは海に入って浮かんでみてほしいですね。オススメはオアフ島のカイルア・ビーチパーク、ラニカイ・ビーチ、ワイキキ・ビーチ。ダイビングやシュノーケルで、カラフルな海中を眺めてみるのもオススメ。またハワイは他の南の島と違い、自然に奥行きがあるのも魅力です。雪山や熱帯雨林もあれば火山地帯まであって、世界の気候帯13のうち11の気候帯が存在しているといわれるほど。ダイナミックな地球を思う存分、感じられると思いますよ。

高砂淳二
 

「地球は母、生き物は兄弟」感謝・尊敬・愛情を伝えつづけたい

―ハワイの先住民の方と触れ合うなかで、印象的だった言葉などありますか?

高砂さん:はい、ハワイアンが教えてくれた「生きる意味」は、その後の写真家人生に大きな影響を与えてくれました。遡ってお話しすると、ハワイにハマって自然写真を撮りつづけるなかで、私には不思議で仕方がないことがあったんです。数えきれないほどの生き物がいるなかで、たとえばナマコは海底でゴロッと横になったまま一生を終え、小魚は1日中お腹を満たすことと外敵から身を守ることに必死になっている。かと思えば、イルカのように人間に興味をもって近づいてくる生き物もいて。

一方で人間は他の生物とはまったく違っていて、他人同士でコミュニティをつくったり、新たな文明を次々と生み出したりしている。食物連鎖や多様性という概念は理解できるんですが、それぞれの生き物には存在する意味や役目があるのかなって疑問が湧いて。そこで、ナイトレインボーを教えてくれたハワイアンの方に、その疑問を率直にぶつけてみたんです。

そうしたら彼は「それぞれの生き物には役目があるよ」と。そして、人間の役目は「アロハを学ぶこと」だと教えてくれました。ハワイ語のアロハには挨拶のほかに思いやり、敬意、愛などいろんな意味があります。アロハを学ぶこととは「生きていくなかで信頼できる家族や友人をつくったり、逆にひどい裏切りにあったり、さまざまな出来事を通して他者への感謝、敬意、愛を感じて、その思いを高めていくこと。また、地球上のあらゆる生物を兄妹だと思い、お互いがバランスをとりながら生きていけるように、自然や生き物にも思いやり、尊敬、愛を注ぐこと」なんだと。その言葉は違和感なく私の胸にストンと落ちました。今でもずっと大切にしている哲学です。
高砂淳二
―高砂さんが写真を撮影するときに、もっとも強く意識されているのはどんなことですか?

高砂さん:今のアロハとも重なりますが、ハワイの古い智恵に「ホオポノポノ」というものがあります。自分の周りの人やモノ、生き物、自然などとの間に、愛情、感謝、敬意などをベースにしたコミュニケーションを図って、周りとのバランスを整えていく方法です。

人間同士だけじゃなく、他の生き物や地球に対してもそういった感謝や敬意、愛をもつことが大事で、写真を撮影するときは「ホ・オポノポノ」の精神を意識しています。たとえば生き物に近づくときは、居場所を荒らさないように配慮するし、植物や大地にもやさしく接する。そうすると時々、太陽、風、雲、植物、生き物、自分自身の動きなどがピタッと1点に集まるような奇跡的な瞬間が訪れるんです。まるで「自然からのプレゼント」のようで、それこそが自然写真を撮影する醍醐味。「ナイトレインボー」と出会えたときも、まさにそうでした。

―最後に写真を通して、高砂さんが伝えたいメッセージを聞かせてください。

高砂さん:それぞれの写真によっても違いますが、先日出版した5大陸、3大洋をすべて回って地球の姿を丸ごと撮影した写真集「Dear Earth」には、「地球への感謝、敬意、愛情を感じよう」というメッセージを込めました。これもアロハの精神に基づいたもの。写真を見てそういった思いを感じてもらいたいのはもちろんですが、機会があればハワイのような地球の生き様を感じられる場所に、直接足を運んでみてほしいですね。

 

(取材・文:高良 空桜)

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