日本で一番巻き込み力の高い盆踊り「郡上まつり」で朝まで踊り明かそう!

本当に美味しい一品に巡りあえば、きっとそれが大好物になる

日本には「盆踊ラー」なる人種が存在する。
いくつかの盆踊りに参加すると「あのひと、前も別の盆踊りで見たな」という人に遭遇する。盆踊ラーは、そんな、夏になると祭りを渡り歩く、盆踊りをライフワークとする人のことだ。

かくいう私もそのひとり。盆踊りにハマり始めて今年で6年が経過した。盆踊りにハマった理由は、大体こんな感じだ。

「浴衣を着て出かける理由ができる」
「音に合わせて身体を動かすのが楽しい」
「世代間交流が自然に発生する」
「振りが簡単なので学習の快感がたくさん味わえる」


……などなど。

これらは多くの人にとって魅力的な要件のはずだが、盆踊りは若者にとってイケてるアクティビティの座を獲得していない。きっとそれは、「年寄りがやるものだから」「輪に入るのが恥ずかしい」「振りを覚えられない」などの理由からだろう。
私だってハマる前はそう思っていた。でもそれは、美味しいウニを食べたことがない人が「ウニのどこが美味しいの?」と言うのと同じことなのだ、きっと。「美味しい」盆踊りに巡りあえば、きっとそれが大好物になる。

そして、多くの盆踊ラーが盆踊りにハマったきっかけとして挙げる、あるお祭りがある。

その祭りの名前は「郡上おどり」

郡上おどり
本家は岐阜で開催されているものの、東京・名古屋・京都などでも開催されている。
東京の盆踊ラー達は、5月末頃から嬉々として「もうそろそろ郡上おどりだ! 今年の夏の盆踊り開きだぞ!」とはしゃぐ。気になってはいたものの、未だ参加したことがなかった私は、6月の最終週末に東京・青山で開催される「郡上おどりin青山」に行ってみることにした。

 

2016年の盆踊りが、ここから始まる

郡上おどり
2日間にわたって開催される「郡上おどりin青山」に私が訪れたのは、初日の18時頃。会場は、銀座線・外苑前駅から徒歩3分のところにある「秩父宮ラグビー場 駐車場」だ。

踊り開始から1時間経過後の到着だったため、会場ではすでに多くの人がやぐらの周りに輪を作っていた。小さなやぐらの中には数人の人が座っていて、和楽器のシンプルな演奏にあわせて、こぶしを回し回し音頭を歌っている。どうやらこの会場では、「東京音頭」や「炭坑節」のようなお馴染みの音頭は流れないようだ。初めて聞く音頭ばかりのセットリストに、輪に入ろうとする足がすくむ。

そのとき、私の頬に小さなしずくが落ちた。雨だ。どんより曇った空からポツリポツリと降ってきたかと思うと、一気にどしゃ降りへと変わった。それでも人々は、踊ることをやめなかった。

郡上おどり
雨が弱まってきた頃、踊りが休憩時間に入った。バラバラとほどける人の輪を眺めていると、ある人物の姿が目に入った。
去年の夏、ある盆踊り会場で、私の手ぬぐいを拾ってくれた老紳士だった。

 

「去年〇〇の会場で手ぬぐいを拾ってくださった方ですよね! 覚えてますか!?」

駆け寄って突然話しかけた私に、その方はにっこりと微笑んでこう言った。

「これはこれは、あの時の……!」

 

御仁、聞けば都内の盆踊りを渡り歩く、筋金入りの盆踊ラーだという。
私が初めて郡上おどりに参加することを明かすと、ポイントを教えてくれた。

「郡上おどりは、全10曲で構成されています。といっても、その内の2曲は最初と最後しかやらない。つまり、8曲踊れるようになれば大丈夫です。踊りもとてもシンプルなので、輪に入ればすぐに覚えられますよ」

郡上おどり
「明けましておめでとうございます。今年もよろしく」
そんな挨拶を交わし、その方は去っていった。

一瞬よく分からなかったが、私が「今年に入って初盆踊りです!」と言ったので「(盆踊り期間)明けましておめでとう」という意味で言ったのだろう。そのことに気付いた瞬間、めちゃくちゃ興奮した。

 

盆踊りは、すべての老若男女に開かれたダンスフロア

郡上おどり
休憩時間が終わり、再び集まってきた盆踊ラーたちに混じって、私はいよいよ輪に加わった。
ぎこちない動きで、周りの人の真似をしながら踊る。

正直、踊りを早くマスターできるかどうかは「分かりやすい踊り方の人が近くにいるかどうか」にかかっている。いまいち良いお手本が見つからないまま半周回ったころ、「はい! 次は右! 左! 回って!!」という声が近づいてきた。

「おせっかい踊ラー」だ。

どこの会場にも一定数存在する、初心者にとってありがたい存在だ。多くはその踊りに精通しているおばちゃんで、おぼつかない足取りの人を見つけると、近づいて振りを指導してくれる。この踊ラーに出会えたらラッキーと心得て、離れずについていくのが吉だ。一曲踊り終えたころには師弟の絆のようなものが生まれているので、仲良くなれる確率も高い。



 

このとき私の近くにいた「おせっかい踊ラー」にはすでに弟子がついていて、私の入る隙はなかったが、おこぼれにあずかることができた。

振りを覚えて楽しくなってきた頃合いに、また次の曲に移る。これもまたシンプルで、覚えてみると3つの動きをひたすら繰り返しているだけだった。どの曲もシンプルな動きと淡々としたリズムのため、だんだんトランス状態のような感じに陥ってくる。

郡上おどり
『春駒』という曲が流れ出すと、会場の熱気はさらに高まった。どうやら郡上おどりのキラーチューンらしい。これまでにない激しい踊りだった。合いの手のような掛け声がいくつかのパートに分かれていて「はるこまはるこま!」と誰かが歌うと、被せるように他の誰かが「ちょいちょいっちょさー!」と叫ぶ。輪の一番内側にいる「常連踊ラー」たちが、ものすごいスピードでやぐらの周りをかけ回る。

周囲の人たちが楽しんで踊っている姿に、こちらも刺激される。

郡上おどり
 

楽しい!

 

クラブには行ったことがないが、こんな感じなのだろうか。でもクラブと違うのは、盆踊りはありとあらゆる老若男女に開かれたダンスフロアであるということだ。国内のどんなイベントを探しても、こんなイベント、ないんじゃないだろうか。

郡上おどり
私という個体が、いつしか輪の中に溶け込む。手を叩く音、衣擦れの音、足をトンと地面に置く音が、幾重にも重なり、パンッ、シャン、ザッ、という音となって会場を満たす。

 

気づけばほとんど飲まず食わずのまま、踊り終了時刻の20時半を迎えていた。

 

郡上おどりの深みへと

郡上おどり
こうして、東京中の盆踊ラーが集まると言われる「郡上おどりin青山」の1日目が終了した。次の日、私には別の用事があったが、結局耐えきれず途中で抜け出して2日目にも参加してしまった。それだけ魅力的だった。

でも、本場・岐阜の郡上おどりは、東京とは比べものにならないほど盛り上がるという。観光ついでに眺めにきた人すらも、巻き込まれてしまうほどに。

それから私が、岐阜の郡上おどりに参加することを決意するまで、さほど時間はかからなかった。

 

 

次回は、いよいよ本場・岐阜の郡上おどりをレポートします!
▶︎低予算で美味しいとこ取り! 岐阜「郡上徹夜おどり」宿なし弾丸トリップ 〜アクセス・会場レポ編〜

 

 

◆郡上八幡観光協会
〒501-4222 岐阜県郡上市八幡町島谷520-1
TEL:0575-67-0002
FAX:0575-67-1771

Writer: 坂口ナオ

大学卒業後5年間事務員として働いていた特許事務所を辞め、フリーライターに転身。その理由は「旅をしながら生きたかったから」。独立後は、イベントレポートやスポット紹介記事を多く手がけ、体当たり系ライターとしてのポジションを確立。「未知なる日本を発掘する」がコンセプトの連載執筆で、目的だった「旅と仕事の両立」を達成する。現在は主にライフスタイル系メディアの編集をしながら、盆踊りや浜田省吾に興じる日々。
Twitter: @skgc_n
HP: NAO SAKAGUCHI worklog

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